よく晴れた土曜日の朝、静かな茅ヶ崎市汐見台の浜で二人の若いお巡りさん(先輩と新人ペア)が現場検証している。
傍らには、一匹の小型犬と中年の女性。女性と一通り話を終えたお巡りさんは、そっと青いバケツを砂浜に置いた。
市民のヘルプにきちんと答えてくれたお巡りさんたち。無駄話は一切なし!
「最初は保健所にお電話したんですけど、管轄が違うようで。動物保護センターは留守電でつながらず、警察署にご連絡したんです」(女性談)
「昨日はウミガメが打ち上げられたという通報が入って、市役所の方が片付けたところだったんですよ」(先輩のお巡りさん)
第一発見者は小型犬。お手柄!
こんなところにいるはずもない、目の前にいるこのクサガメは、まだ生きている。よく見ると甲羅が削れているから、
恐らく飼われていたのに捨てられて、猫やカラスにつつかれたのだろう。
クサガメは【落とし物】という扱いになり、「落とし主」が見つからなければ発見者が取得可能となるらしい。
女性はその権利を放棄し、自分の仕事はここまでと踏ん切りを付けたようだ。
遠巻きにこちらを見るサーファーやランニング中の人たち。もっと野次馬が群がるかと思っていたのに、意外だった。
彼らのそばを通り過ぎる時、「殺人事件かなあ」と呟く声を聞いた。みんな人のことなんて、いや、カメのことなんて気づかないし、どうでもいいのだろう。
気が付けば、家を出てから3時間以上も経っていることに気付く。クサガメの無事を祈りつつ、足早にその場を去った。
(E)