5月に4年振りの旅行だったにも関わらず、機内の映画閲覧メニューに日本語字幕がないため映画鑑賞を断念した私。
ちなみに、隣の日本人男性は自分の携帯からNetflixを観ていました。実に旅慣れている感じがします。
帰路はどのようにして時間をつぶそうかと放心していたところ、機内前方に座っている女性が観ていたものが目に入り、音無しの映像だけでも引き込まれて行きました。
これは絶対に私が好きな感じだと確信したので、途中から敢えて観るのを(盗み見ですが)やめることにしました。
盗み見してきた映画のアウトラインを元に、帰宅してからネットで検索するとドンピシャの少年が出てきました!
映画のタイトルは「存在のない子供たち」(2018年製作)。
これは、いつぞやか夕刊の広告で見かけて観たいと思ったまま放置してしまったやつだ……とあれから5年も経っていたことにしばし唖然。
レバノンの女性監督であるナディーン・ラバキー氏は私と同い年。ご縁を感じるとともに、後ろから強打されたかのような衝撃を受けます。
Amazonprimeで400円で購入(3日間視聴OK)。Amazonprimeは深堀りして検索していくと結構マニアックな作品も多くうれしいのですが、どういうわけか観たい映画がほとんど有料です。
ビデオレンタルしていた時代を思い、ぐっとこらえて即購入します。
映画やドラマは初めの1~2分で引き込まれないと視聴できない私ですが、導入から目が離せない潮流に飲み込まれていきました。
中東のスラムを描いた目をそらしたくなるような現実は、あまりにも信じ難い事実として胸に迫ります。
物語はキレイごとがひとつもないのですが、終盤戦局が大きく好転します。少年刑務所で主人公へのコールが巻き起こるシーンは圧巻。
3年間のリサーチ、半年間の撮影をかけたというこの作品は、ほぼドキュメンタリーと言っていい内容です。
子どもたちの演技があまりに自然で素晴しく、どうしてここまで真に迫ったパフォーマンスが出来るのか疑問でした。
それもそのはず、出演者のほとんどが役柄によく似た境遇の素人を集めたそうです。
「この映画で描く状況を、演じる側もちゃんと理解していることが重要だった。それは、彼等が自分たちの目指すものについて語るときに、ある種の正当性を持って語ることができるようにね。でなければ、こんな重い人生を背負いながら地獄のような場所で生きている人たちを、役者が演じるのは無理だったと思う」と監督はインタビューで語っています。
映画に出てくるような耐え難い状況に置かれているような子供は世界に10億人くらい存在すると言います。
その現実を知ることだけでもいい、世界中の人に観てほしいという思いでいっぱいになります。
一生のうち、人と人との出会いは偶然ではなく必然的に出会うという考え方がありますが、この作品も然り。
出会うべくして出会った、自分へのおみやげとなりました。
(E)