こんにちは! とことこ湘南編集部・Yです。
書店の新刊・フェア平積みコーナーで見かけたこちらの本。
ご存じ、シャーロック・ホームズシリーズの第1作「緋色の研究」。
日々新刊が入荷し、移り変わる書店の棚の中にも、常に、確実に置いてあるクラスのオールタイムベストですが………。
帯の文言に得も言われぬ違和感を覚え、つい立ち止まってしまいました。
…………
「そらそうでしょ!」
思いませんでしたか? 思いますよね。
新潮文庫のミステリフェアで付けられていたようで、松本清張の「点と線」「眼の壁」、今野敏「隠蔽操作」、江戸川乱歩の短編傑作集などが同様の帯を付けて並んでいました。
【桶川】※本当にフィクションです「新潮文庫のミステリー…」フェア開催中!https://t.co/ph9vaHby7T
丸善 桶川店 @maruzen_okegawa 文庫フェアコーナーにて4/30(火)まで。『豆の上で眠る』『ボトルネック』『暗幕のゲルニカ』『火のないところに煙は』…新潮文庫の人気ミステリー小説が大集合! pic.twitter.com/QjDHS2VzQA— 丸善ジュンク堂書店【公式】 (@maruzeninfo) March 31, 2024
▲私が見た所とは別の書店さんですが、こんな感じのコーナーでした
「※本当にフィクションです」
という帯は物語がフィクションであることを敢えて強調するもので、読んでいてあたかも本当の話かと疑ってしまうような、真に迫る作品に付けることで
「こんなにリアリティのある、本当としか思えない話が、1人の作家の頭の中で生み出されたものなのか! 物語って凄い!」
と、感動を呼び起こす効果があるものと思われます。
なので、松本清張作品なんかは、わかる気がします。でも幼少期は「ET」や「REX 恐竜物語」を見て「映画に出演しているってことは、ETもREXも本当に居ないと無理だよね?」とか思っていた私ですら、ホームズがノンフィクションだとは1回も思ったことがありません。
フィクションのキャラクターとして有名すぎるからでしょうか。乱歩先生の短編なんか、パラパラッと見たら「踊る一寸法師」とか収録されているんですよ。ノンフィクションだったら余りにも怖すぎる!
見れば見るほどどんどん面白くなってきて、殆ど帯目当てで買ってしまいました。
「緋色の研究」はハヤカワ版を既に持っているのですが、出版社が違えば訳も違うし、まあ、何冊あってもいいでしょう。(?)
▲帯を外すと、凹凸加工で実験器具が浮かび上がる仕様に。格好いいです。
この帯、文言も去ることながら、少し前に話題になっていたモキュメンタリー風ホラー「近畿地方のある場所について」の表紙に少し似ているのもあってか、やけにおどろおどろしい感じがするんですよね…。
そんな要素もあってか「※本当にフィクションです」という簡素な1文がホームズに必要以上のド迫力を付与していて、余計に面白くなっているのかもしれません。
この面白さを何かに例えて伝えようかとも思ったのですが、しっくりくる例が見つかりませんでした。
「ももたろう」とかだとフィクション過ぎるし、「1984」だと逆に批評性が出て、凄く相性良いかもしれない。やっぱり「緋色の研究」は絶妙。
家にある本でも試してみたのですが、超えるものは見つかりませんでした。
本を持ち歩く質なので、気に入った帯を取っておいたつもりでも、いつの間にか外れてなくなっていたりするのですが、見返すと結構面白いんですよね。
時代性もあったりするし、体系立てて収集していれば高い資料的価値が生まれそうです。
「本の帯展」とかあったら行ってみたいです。(もうあるのかもしれませんが)
一人の作家に絞って特集してみたり、出版社ごと、編集者さんごとに見てみたり…。
「この本を読んで欲しい!」という思いが込められた、帯には帯のドラマが詰まっていそうです。
(Y)