第3回 晩秋の体
(1)腎臓の負担
文化の日がある11月初旬は、学園祭も多く、毎年のように穏やかで気持ちの良い日が続きます。ただ今年は新型コロナの感染拡大に伴い、この時期のイベントも中止されているのが残念ですね。
さて、中旬辺りに差し掛かる辺りからそろそろ寒さが入り込み、下旬にもなると遂にコートの出番がやってきます。
こうした気候変化の中で、体はどのように変化していくのか、整体の専門家としてとても興味深く観察させてもらっています。
本格的な冬の寒さはまだですが、体は夏の終わりとともに少しずつ体温調整作業に舵を取り始めてきました。汗をかくことで体が緩んでいた頃とは違い、むしろ身を引き締め始めてきます。
体が緩んでいた時期は皮膚の毛穴も広がり、水分の排泄作業として汗を出していましたが、外気温が下がっていく中、毛穴も閉じ気味になり、汗による水分排泄量が極端に減っていきます。
そこで、不要になった水分を小便として捨てる作業に少しずつシフトしてきます。このため、それまでは適度に働いていた腎臓が、血液の濾過作業に忙しくなり始め、冬に入る手前のこの時期になると、腎臓にかなり負担がかかってきます。
腎臓が悪くなる?いえいえ、そうではなく、腎臓の活動がそれまでの時期とは大違いになるため、少し疲れ気味になってくるのです。
腎臓が疲れてくると何が起きてくると思いますか?
背骨で観ると、腎臓は胸椎10番と関係しています。背中の中心辺り(左右の肩甲骨の下角を結んだ辺り)にある胸椎8番よりも下に位置しています。
腎臓の疲労が出てくると、この10番周辺が張ってきます。そのために、体が無意識に重さを感じ、腰が上体を支えるのに苦労し、少し下がってきます。
腰が落ちてしまうと、体はバランスを保とうと、猫背気味になるので、肩や首に余計な力がかかってきてしまい、様々な体の違和感が現れてくるのです。
こうした現象から、上半身に力が入り、逆に足元がおぼつかなくなるため、ちょっとした段差に足指が引っかかって、つまずく人も出てきます。
また、膝痛が現れる人もいます。これは腰が下がってきたことで、体の回転がしづらくなり、前後にしか動かない膝で捻じってしまうために起こります。
膝そのものをいくら処置しても、なかなか経過が思わしくないのではないでしょうか。本来の原因(腎臓の疲れ)を変えていかないと、膝の痛みが治まらず、結局長引かせてしまいかねません。
テニスやゴルフなどの体の回転を利用するスポーツでは、こうした現象が顕著になってきます。腰の回転が思うようにいかないため、腕だけで振るので、無意識に手でこねてしまい、俗に言われる「テニスエルボー」や手首の痛みに繋がってしまうこともあります。
こうした意味合いからも、本来の原因である腎臓の負担を少しでも和らげるのがこの時期のポイントとなります。
そこで、次回はそのための整体法の対策をお伝えしたいと思います。