【「鎌倉殿の13人」を地元目線で満喫するコラム①】「鎌倉殿の13人」って誰のこと? ざっくり解説
2022年度のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人(かまくらどのの13にん)」、皆様ご覧になっていますか?
これまでにも、義経が主役の「源義経」(1966年)「義経」(2005年)、頼朝・政子夫婦がダブル主人公の「草燃える」(1979年)等、同時代を扱った大河はありましたが、北条義時が主人公というのは初。「判官贔屓」という言葉通り、古くから浮世絵や歌舞伎に引っ張りだこの人気者はやはり源義経ですよね。夢半ばで散ってしまう儚さは歴史ファンの心をくすぐるものですが、そんな義経でもなく、鎌倉幕府を開いた頼朝(with政子)でもなく、頼朝亡き後の権力争いに於いて“勝者”と言えるような義時を主人公に据えたあたり、一味違った大河になりそうでとても楽しみですね。
当サイト(とことこ湘南)的に見逃せないのが、やはりメインの舞台になるのが「鎌倉」になるということで、非常に身近な地名が物語のそこここに出てくる点です。とことこ湘南が主に取り扱っているエリアの茅ヶ崎・藤沢辺りは当時「大庭御厨(おおばみくりや)」と呼ばれており、こここを支配していた大庭氏の一族である大庭景親(かげちか)さんが、ドラマ第1話目から登場しています。(景親の兄・景義は頼朝の味方だった筈なのですが…出てくるのでしょうか? 活躍してくれたらうれしいのですが!)
当編集部でも「見た?」「見ました!」と盛り上がっている今回の大河。
湘南にもゆかりの史跡、逸話などがたくさんあるので、よりドラマを楽しめるような話題を地元中心にお届けしていければと思います。
今回は第1回というより本格始動前の第0回のようなものですが、まずは「鎌倉殿の13人」という、心惹かれる謎めいたタイトルから。
「鎌倉殿」って誰? 「13人」は誰で、どういう括りの人たちなんだろう? というまず思い浮かびそうな疑問については、番組公式HPにて、脚本を務めた三谷幸喜さんのコメント内に答えがありました。
「『鎌倉殿』が源頼朝のこと。『13人』は、頼朝の死後、合議制で政治を動かした家臣の人数を示しています」。(同HPより引用)
頼朝の死により家督を相続したのは政子を母とする嫡男の源頼家でした。この時、武士間での訴訟について、頼家の独断での裁定を防ぐために設置されたのが「十三人の合議制」。頼朝時代の有力者13名が名を連ね、会議の上で判断を下すことが決められたそうです。
鎌倉時代を知るうえで非常に重要な文献であり、「鎌倉殿~」では原作の1つ、と三谷さんが公言されている「吾妻鏡(あずまかがみ)」に、その13名の名前が記されています。
「十三人の合議制」メンバーはこちら。(説明は2022年3月時点の情報です)
1. 北条時政(ほうじょう ときまさ)
北条政子・義時姉弟の父。北条氏の一門で、伊豆を拠点とする豪族でしたが、政子が頼朝と婚姻を結んだことにより、頼朝の舅となり、挙兵に参加することになります。「鎌倉殿の13人」内では坂東彌十郎さんが演じ、人間臭く、おどけた冗談を好みながらも、いざというときは頼もしい面も見せる人物として描かれています。血気盛んで頼朝の挙兵を強く願う息子・宗時とは違い、元々は強い野心のあるタイプではなさそうでしたが、彼が溺愛する新しく迎えた奥さん(宮沢りえさん)はそうではないようです。彼女も今後キーパーソンになりそうですね。
2. 北条義時(ほうじょう よしとき)
(1)の北条時政の息子(次男)で政子の弟。政子が頼朝と結婚した時点では義時は15、6歳頃。父・時政と兄・宗時(ドラマでは片岡愛之助さん)とともに頼朝の挙兵に参加し、大きく運命が動き出す。言わずと知れた「鎌倉殿の~」主人公で小栗旬さんが演じています。平穏に、事務仕事をしながら暮らしたかった筈が巻き込まれるように頼朝に付き従う立場になりましたが、“13人”の1人に数えられるようになる頃には、心境にも振る舞いにも大きく変化が訪れているはずです。頼朝も彼の凡ならざる素質に気付いているのか、義時だけに心の内を伝えたりと特別な扱いをしているように見えます。
3. 大江広元(おおえの ひろもと)
百人一首の歌人・大江匡房(おおえの まさふさ)のひ孫とされている貴族(※)。京の朝廷に使える官人だったが兄(=13人の1人。〈5〉中原親能参照))の縁で鎌倉に下り、頼朝に仕える。「鎌倉殿~」では同じく三谷さんの大河「真田丸」にも出演された栗原英雄さん。吾妻鏡内で「私は成人してから涙を流したことがありません」と発言する場面があり、冷静・冷徹な人物であることを示す逸話とされていますが、文脈的に「この涙はそれ位の大事ととらえてください」と強調したかっただけのようにも思えます。ただ、鎌倉幕府創立期に頼朝の側近として政治の中心的な存在を務めた、有能で名実相伴った人物であったことは間違いありません。
※ひいお爺ちゃん匡房の句は「高砂の 尾の上の桜 咲きにけり とやまの霞 立たずもあらなむ」:百人一首73番
4. 三善康信(みよしの やすのぶ)
下級貴族出身。母が源頼朝の乳母の妹である縁で、伊豆に流されていた頼朝に京都の情勢を書き送っていました。「鎌倉殿~」で演じるのは小林隆さん。第3話では頼朝に先んじて以仁王(木村昴さん)が平家打倒のため挙兵、あっという間に負けてしまった際に「頼朝様の方にも追手が来るからお逃げください!(この時点では来ない)」と、早とちりな内容の手紙を送ってくるちょっとおっちょこちょいな人物として、描かれていて可愛かったですね。ちなみにこの時の手紙も吾妻鑑に出てきます。“早とちり”という解釈は後世のものみたいですね。
5. 中原親能(なかはらの ちかよし)
流人時代の頼朝と縁があり、挙兵に従う。(3)の大江広元の兄。実の兄弟、あるいは異母兄弟であると、出自には諸説あるようです。「鎌倉殿~」ではまだキャスト発表もされていないようです。頼朝とは幼少期から親しかったとされる説もあり、どんな人物として登場するか楽しみですね。
6 .三浦義澄(みうら よしずみ)
相模の武士団・三浦一族を率いる棟梁。ドラマでは佐藤B作さん。(1)の北条時政とは”悪友同士”といった関係。両者ともに流人となった頼朝の監視役として伊豆に派遣されてきた伊藤祐親の娘を娶り婚姻関係を結ぶことで、手綱を握られたような状態にあり、似たような境遇もあってか非常に仲が良さそうに見えます。北条との縁もあり、頼朝挙兵に早々に応じてくれていました(悪天候で参戦が適いませんでしたが)。「坂東武者(※)のための世を!」というのがドラマ内でキーワードとして出てきますが、三浦家はいかにも坂東武者といった感じで頼もしく映ります。
※坂東武者=関東生まれの武士たち。武骨で勇猛なことで知られた。
7. 八田知家(はった ともいえ)
北関東、現在の栃木県辺りを収めていた宇都宮氏に生まれる。一説では頼朝の父・義朝の落胤(らくいん=隠し子)とも。ドラマで描かれているよりも前の時代、皇位継承問題等を発端として起こった「保元の乱」では義朝に従い参戦。源平合戦でも頼朝側で参戦します。「鎌倉殿~」では市原隼人さんが演じるそうです。告知では「敵か味方か」「多くの謎に包まれている武将」等意味深な言葉が使われていて、どのように描かれるのか気になるところです。
8. 和田義盛(わだ よしもり)
(6)の三浦義澄の甥。弓の名手で、武勇に長けた人物であったとか。それでいて気が短くてちょっと思慮が足りないところがあるという、三国志でいえば「張飛」的な(ヒゲもちょっとそれっぽい)、物語上では愛されキャラにになりそうなタイプです。実際、「鎌倉殿~」でも横田栄司さんが非常にチャーミングに演じています。第6話では武士たちが集まる前で頼朝に「一番働くので大願成就の暁には侍大将にしてください!」と直談判して周囲を和ませていました。「合議制」に参加して大丈夫かな?とちょっと今から心配です。
9. 比企能員(ひき よしかず)
頼朝の乳母・比企尼(ひきのあま)の養子。比企尼は頼朝の流人時代から約20年間、頼朝を援助し続けた“大恩人”。そんな比企家の長年の支援が認められたことから能員の妻が頼朝の嫡男である源頼家の乳母に。更には娘が頼家に嫁ぎ、比企家は幕府への強い影響力を持つようになります。「鎌倉殿~」で演じるのは佐藤二朗さん。草笛光子さん演じる比企尼にたじたじしていましたね。同作は互いに権謀術数で謀り合う権力闘争が見どころになるというのはあちこちから聞こえていますから、現時点ではコミカルに描かれている人ほど、どうなるのかドキドキしてしまいます。
10. 安達盛長(あだち もりなが)
頼朝が伊豆の流人であったころからの側近。後の時代に書かれたとされる軍記物語・曽我物語(そがものがたり)では頼朝と政子を引き合わせた人物として描かれており、これは物語上の創作の色が濃いとしても、実際に頼朝のために何彼と働いた信頼の厚い人物ではあったようです。彼は(9)の説明で登場した比企尼の娘・丹後内侍を妻にしていましたが、我らが地元・茅ヶ崎に彼女に纏わる逸話が色々残っていたりします。それは頼朝どうなのって言う…いずれご紹介したいと思いますのでお楽しみに! 「鎌倉殿~」で彼を演じているのは野添義弘さん。いい人感が滲み出ていて姿を見るとホッとする存在です。
12. 梶原景時(かじわら かげとき)
頼朝が挙兵してすぐの「石橋山の戦い」にて、敵の大庭方に居ながら、山中に潜む頼朝を敢えて見逃したエピソードが有名です。「鎌倉殿~」では中村獅童さんが表情の読めない、油断ならない人物として演じていて、件のシーンも「助かって良かった!」というより「見逃された…でも何故?」と余計に怖くなるような緊迫感がありました。義経が主人公の歌舞伎などでは悪役イメージが強い景時ですが、だからこその”ひねり”がはいるかもしれませんよね。
13. 二階堂行政(にかいどう ゆきまさ)
元は下級役人として朝廷仕えており、遠い親戚関係であった縁で頼朝の元へ。(3)の大江広元を補佐し、内政に於いて重用されました。「鎌倉殿~」にはまだ未登場。キャストも未発表の状態で、目立った逸話や人物像が伝わる言動も残っていないため何を書いたらいいか困ったところです。逆に、何らかの“サプライズ枠”として言及されないままになっているのかも…? 名前だけ覚えて、待ち構えてみましょう。
結局タイトルの意味って? (勝手な考察です)
――以上が、タイトルにもなっている13人です。
ドラマではまだ「十三人の合議制」発足前を描いている現在は、歴史上でも有名な人物、既に作品内で活躍している人物から、どのように描かれるかもまったく謎の状態の人物まで、ばらばらな印象に思えますね。
大河ファンであり、歴史通で知られる芸人の松村邦洋さんは自著(※)の中で「数字そのものには意味はあまりないんじゃないか?」と想像されていました。「三谷さん、数字がお好きじゃないですか。『12人の優しい日本人』とか」と。
私はこれは相当鋭いと思いました。三谷さんもそうかもしれませんが、そもそも誰もが「数字が好き」なのではないでしょうか。「世界3大〇〇」「〇〇ベスト10!」なんて括りでの特集は毎日のように様々なメディアで目にしますし、現に「13人って誰と誰?」と気になってしまっていますよね。こうして興味を引くために、三谷さんが愛用する手段が「数字」なのかもしれません。
※「松村邦洋鎌倉殿の13人を語る」(プレジデント社)。たくさん出ている関連本の中でもすごくわかりやすいし面白いです。
それでいて、三谷さんは制作発表にて「今年の暮れには日本中の皆さんが13人の名前を言えるようになっていると確信している」とコメントされています。
もしかしたら13人それぞれにものすごく印象に残る活躍が描かれていくのかもしれません。
今年の暮れ、「二階堂行政」をしっかり覚えている自分が楽しみです。
13人について、一応ネタバレを避けるため生没年等は入れませんでした。これからどうなるか、もドラマが進んだらまた違った視点で記事にしていければと思います。
どうぞお付き合いをお願いいたします。
(書いたスタッフ=編集部Y。詳しくないけど歴史好き。折角のこの機会に、1年かけて勉強していきたいと思っています)